――レシピの水分量の調節について――
オリジナルのレシピを組むときには、基本的な水分量の計算の仕方があります。
『オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る』の102ページで紹介されているのが、
皆さんもご存知の基本の計算方法ですね。
ところが、前田さんに教えていただく新レシピを注意深く比べていくと、
その計算方式の基本に加えて、何か細かい調節がされているようなのです。
たとえば、最近のメルマガ、
vol.279(2010.6.4配信)で紹介されたレシピ
「マカデミア・シナモンバー」と
vol.274(2010.4.30配信)
「ラベンダーとシナモン入りのマルセイユ」のレシピです。
確かに、オイルの総量が同じなのに
精製水の量が微妙に違いましたね。
・「マカデミア・シナモンバー」
【材料】
マカデミアナッツ油 360g
パーム油 120g
ココナッツ油 120g
シナモンパウダー 小さじ2杯
精製水 240g
苛性ソーダ 81g
・「ラベンダーとシナモン入りのマルセイユ」
【材料】
オリーブオイル 432g
スイートアーモンド油 30g
シアバター 12g
パーム油 48g
ココナッツ油 78g
シナモンパウダー 小さじ2杯
精製水 245g
苛性ソーダ 77g
エッセンシャルオイル
ラベンダー 120滴
基本の計算式によると、オイルの総量は600gなので、
水分量は233gになるはずですが、
ドライスパイスのシナモンパウダーが加わっていることもあり、
「マカデミア・シナモンバー」では、
240gの水分量になっています。
(前田さんによれば、この240gというのは、オイルの総量が600gのとき、
日本で石けんを作る場合に、気温や湿度の違いや地域を問わず、
失敗を避けるための基本的な水分量だとのことです。
水分が少なめでけん化反応がうまくいかず、むらができて失敗することはあるが、
やや多めでも、最終的には蒸発するので、少なめよりは多めの方が安全とのことです。
ただしあまり多くなってしまうと、今度は型から出にくくなるので、
その点はまたそれぞれの家の環境によって、微調節の余地ありとのこと)
けれども、「ラベンダーとシナモン入りのマルセイユ」の方は、
240gでなく、245gという水分量になっているんですね。
そこで前田さんにその訳をうかがってみると、
これはオイルの配合の違いによるそうです。
『ココナッツ油の配合比率が高い場合(マカデミア・シナモンバー)、
ココナッツ油の性質により、けん化のスピードが速くなり、
配合比率が低い場合(シナモン入りのマルセイユ)よりも、
熟成が初期に進み、固まるのも速くなります。』
ココナッツ油配合比率は
「マカデミア・シナモンバー」は20%、
「ラベンダーとシナモン入りのマルセイユ」は13%。
『けん化のスピードと水分の蒸発の速度が、同じような曲線を描いて
進むようにレシピの分量を組むのが、見かけもムラなく、
きれいな仕上がりの石けんを作るコツのひとつなんです。
そのため、初期のけん化のスピードが速い(ココナッツ油の多い)レシピは、
スピードがゆっくりめのレシピ(ココナッツ油の少ない)より、
早めに水分が飛ぶように、水分量を微妙に少なめに調整しています。』
けん化のスピードと水分蒸発のスピードが揃うことまで考えて、
レシピを組んでいるとは!!
前田京子さんのレシピは細かいところで
工夫がなされていて、それぞれ実は理由があるようです。
「その心は?」とレシピを読み解くのを楽しみながら、
さらに、ご自身で石けんのレシピをお考えの際には、
いろいろとお役立てください。